大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和30年(オ)547号 判決

上告人 国

訴訟代理人 岡本拓 外二名

被上告人 保谷作治

補助参加人 染谷昌亮

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人指定代理人青木義人、同関根達夫、同岡木拓の上告理由について。

原判決の認定した事実関係(この事故を惹き起した自動車は、通商産業省の自動車であつて、これを運転する鹿沼忠左衛門は、同省の職員として専ら自動車運転の業務に従事するものであるし、これに乗車する中村寛二は、従来通商産業大臣秘書官として常に本件自動車に乗車し本件事故当時は辞表提出後ではあつたがその辞令の交付なく未だその官を失つていなかうたものである。)の下において原判決が民法七一五条の適用上本件事故を右藤沼が通商産業省の事業の執行につき生ぜしめたものといい得る旨判示したことは首肯できる。けだし原審の確定した事実関係によれば、右藤沼の本件自動車の運転は、たとえ、中村秘書官の私用をみたすためになされたものであつても、なお、通商産業省の運転手の職務行為の範囲に属するものとして、同省の事業の執行と認めるのを相当とするからである。それ故論旨は採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 斎藤悠輔 真野毅 岩松三郎 入江俊郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例